ここには、 もう何もありません。 以前は何かが存在していたのかもしれませんが、 今は確かめる方法もありません。

人は少しずつ変わっていきます。 昨日まで自然に使っていた言葉が、 今日はほんの少しだけ遠く感じることがあります。 以前は迷わず選んでいたものを、 今は静かに通り過ぎていくこともあります。 変化というほど大きなものではなく、 輪郭が少しずつ動いていくような感覚です。

以前、 とても仲のよい友人がいました。 毎週のように出掛けて、 特別な予定がなくても会っていました。

ですが、 ある時期を境に、 自然と連絡を取らなくなりました。

何か出来事があったわけではありません。 喧嘩もなく、 嫌いになったわけでもなく、 ただ少しずつ、 生活の流れが変わっていったのだと思います。 気付けば、 前ほど頻繁には連絡をしなくなり、 その間隔が、 また少しずつ伸びていきました。 相手がどう感じていたのかは分かりません。

ですが、 きっと私と似たような感覚だったのではないかと思っています。 急に関係を断ち切るような強い感情ではなく、 もっと穏やかで、 曖昧で、 流れていくような変化です。 今も同じように感じているのかは分かりません。 ですが、 何も残っていないわけではありません。

もう以前のように毎週会うことはないのかもしれませんし、 逆に、 何かをきっかけに、 また自然と話すようになるのかもしれません。 未来については、 あまり決まっていません。

それでも、 一緒に過ごした時間そのものは残っています。 ふとした景色や、 昔よく歩いた道や、 会話の断片、 どこかで流行った「硝子片集め」のようなものが、 今でも時々、 どこかに引っかかります。

人は変わり続けます。 関係も、 言葉も、 少しずつ形を変えていきます。 ですが、 完全に消えてしまうわけでもないのだと思います。 ずれ続けた先にも、 まだ輪郭のようなものは残ります。

そのページも、 以前ここに存在していたのかもしれません。 ですが今は、 ここには何もありません。 ただ、 何も残っていないとは、 言い切れないのだと思います。

会話が静かに壊れていく感覚のように、関係は明確に終わるのではなく、 「気づかない速度でほどけていく」ものです。

静けさそのものを美として扱う視点のように、 何も起きていない状態すら、「ひとつの形として残っていく」ことがあります。

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