レジ横に、「小さな鉢植えが置かれて」いた。 たぶん観葉植物だった。 名前までは分からない。 葉は細長く、少しだけ斜め上に伸びていて、白いプラスチックの鉢に収まっていた。 鉢の表面には乾いた土が少し見えていて、丸い値札シールの跡だけが妙に新しかった。

休日の夕方だった。 買い物かごには野菜や肉、洗剤などが入っていて、袋詰めの順番を待っていた。前の人が終わるまでの数分間、レジ横の植物を見る時間ができた。 その時、「少し離れた場所で大きな声」がした。

ハンズフリーで電話をしている人だった。相手の声は聞こえないのに、その人の声だけが店内に広がっていた。 「だからさ」と何度も言いながら、財布から出したお金をレジのトレーへ少し滑らせるように置いた。

硬貨が3枚、乾いた音を立てた。 たぶん、ああいう人を「ガサツ」と呼ぶのだと思った。 ただ、その人を見た後に植物を見ると、少しだけ違うものに見えた。

葉は誰かに合わせることなく伸びていた。店員にも客にも気を遣わない。 隣で誰かが大きな声を出していても、葉の角度は変わらなかった。

もしかすると、この植物もかなり自由な性格なのかもしれないと思った。 水やりの時間を忘れられても、急に場所を移されても、文句を言う場所がない。 ただ置かれた場所で、少しずつ葉を広げている。

……いや、植物に性格を付け始めると、少し話が変な方向へ進む。 植物は自由なのではなく、動けないだけかもしれない。 そう考えると、レジ横に置かれている理由も少し気になった。 店内の空気を柔らかくするためなのか、ただ空いていた場所に置かれただけなのか。 たぶん後者なのだろうが、前者だったことにしても困る人はいない。

袋詰めを終えた人が横を通り、葉が少し揺れた。 空調の風だった。

誰かに揺らされたわけでもなく、誰かへ返事をしたわけでもない。 白い鉢の中で、細い葉が数枚、少しだけ揺れていた。