掃除の途中で見上げなかった空
2026.06.20 (土)
土曜日の朝、掃除機をかける前に窓を少し開けた。 部屋の中の空気が動いた気がしたが、実際にはカーテンが3センチほど揺れただけだった。 大げさに風が入ってきたと思ったのは、たぶん掃除を始める前の人間側の準備不足だった。
窓の向こうには空があった。 いつもあるものなのに、掃除の日だけ少し存在感が変わる気がする。 床を見る時間が長いからかもしれない。 普段なら目の高さにある景色ばかり見ていて、上側にあるものは壁紙の一部くらいに扱っている。
空は青かった。 と書こうとして、少し迷った。 よく見ると白い雲が薄く広がっていて、青というより灰色に近い部分もあった。 晴れの日という分類に入れてしまったが、空自身はそんな分類表を渡された覚えはないだろう。 人間が勝手に天気予報の欄へ押し込んでいるだけかもしれない。
風呂掃除では浴槽の白い底に水滴が残っていた。 スポンジを動かす音に合わせて、流していた音楽のリズムが少し近づいてきた。 その時、体を少し揺らした。 本当に少しだけだった。
足の位置は変えず、肩だけ動かす程度だったので、踊ったと言うには証拠が足りない。 もし監視カメラがあったとしても、たぶん「何かを確認している人」と判断されると思う。
でも口笛は出た。 自分でも少し驚いた。掃除をしていたはずなのに、いつの間にか音を拾う側になっていた。 窓の外を見ると、さっきの空はまだ同じ場所にあった。
雨の日のことを思い出した。 雨の日は道路の色が変わる。 車の通った跡が暗く残って、普段は気にしない電柱の影まで少し濃くなる。 なのに、「雨が降ると天気が悪いという情報だけ先に受け取って」しまう。
たぶん空にも似たようなことがある。 曇っている、暗い、雨が来そう。 そういう名前を先につけてしまう。
空を見たつもりで、「空の説明書を読んでいるだけ」なのかもしれない。 いや、そこまで大げさな話でもない気がする。 単純に掃除中で、次に洗面台を拭かなければならなかっただけだ。空を見る時間を作るほど立派な予定ではない。
そう思ってタオルを持った。 でも窓を閉める前に、もう一度だけ上を見た。
雲の形は少し変わっていた。 さっき見た場所とは違う形になっていて、最初からそこにあったのか、それとも見逃していたのかは分からなかった。 空は、何も言わずにそこにあった。
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