土曜日の朝、掃除機をかける前に窓を少し開けた。 部屋の中の空気が動いた気がしたが、実際にはカーテンが3センチほど揺れただけだった。 大げさに風が入ってきたと思ったのは、たぶん掃除を始める前の人間側の準備不足だった。

窓の向こうには空があった。 いつもあるものなのに、掃除の日だけ少し存在感が変わる気がする。 床を見る時間が長いからかもしれない。 普段なら目の高さにある景色ばかり見ていて、上側にあるものは壁紙の一部くらいに扱っている。

空は青かった。 と書こうとして、少し迷った。 よく見ると白い雲が薄く広がっていて、青というより灰色に近い部分もあった。 晴れの日という分類に入れてしまったが、空自身はそんな分類表を渡された覚えはないだろう。 人間が勝手に天気予報の欄へ押し込んでいるだけかもしれない。

風呂掃除では浴槽の白い底に水滴が残っていた。 スポンジを動かす音に合わせて、流していた音楽のリズムが少し近づいてきた。 その時、体を少し揺らした。 本当に少しだけだった。

足の位置は変えず、肩だけ動かす程度だったので、踊ったと言うには証拠が足りない。 もし監視カメラがあったとしても、たぶん「何かを確認している人」と判断されると思う。

でも口笛は出た。 自分でも少し驚いた。掃除をしていたはずなのに、いつの間にか音を拾う側になっていた。 窓の外を見ると、さっきの空はまだ同じ場所にあった。

雨の日のことを思い出した。 雨の日は道路の色が変わる。 車の通った跡が暗く残って、普段は気にしない電柱の影まで少し濃くなる。 なのに、「雨が降ると天気が悪いという情報だけ先に受け取って」しまう。

たぶん空にも似たようなことがある。 曇っている、暗い、雨が来そう。 そういう名前を先につけてしまう。

空を見たつもりで、「空の説明書を読んでいるだけ」なのかもしれない。 いや、そこまで大げさな話でもない気がする。 単純に掃除中で、次に洗面台を拭かなければならなかっただけだ。空を見る時間を作るほど立派な予定ではない。

そう思ってタオルを持った。 でも窓を閉める前に、もう一度だけ上を見た。

雲の形は少し変わっていた。 さっき見た場所とは違う形になっていて、最初からそこにあったのか、それとも見逃していたのかは分からなかった。 空は、何も言わずにそこにあった。