曇っている朝は影が薄い。 それでも無くなるわけではなく、靴の下や植え込みの根元に、小さく折り畳まれて残っている。 花の前で足を止めたわけではないが、歩幅が一つだけ短くなった。

たぶん毎朝そうしていたのだと思う。

低木は昨日までと同じ場所にあった。 道路との境目に並ぶ縁石、灰色のブロック、白線。その隣で広い葉だけが妙に元気そうに見えた。 花は茶色く縮れていて、丸く集まっていた形だけが残っている。

影も同じ形を覚えているようだった。 そんなことはないと反論しかけたが、影は覚えるものではなく映るものだ。 たぶんそういう担当だろう。担当が違うだけで、やっていることは似ている気もした。

信号機の電子音が二回鳴る。その間に横断歩道を渡る人が七、八人。 私は渡らず、そのまま植え込みの横を歩いた。

影は曇り空のせいで輪郭が曖昧だった。 花が咲いていた頃も同じだったはずなのに、その頃は花ばかり見ていて影まで見ていなかったらしい。

影は花より少し遅れて動くように見えた。もちろんそんなことはない。 私が歩いているから見え方が変わるだけだ。 時計も朝だから急げと言っていた気がするが、腕時計はただ七時四十八分を表示しているだけだった。

急がせているのは時計ではない。そう思ったが、今日は時計のせいにしておくことにした。 毎日責任を負わされているのだから、一日くらい追加されても困らないだろう。

葉は思っていたより大きかった」。一枚が手のひらくらいある。 花が咲いていた頃は、花の丸い集まりばかり見ていて、葉は背景だったらしい。

背景だったものが前に出ると、最初からそういう植物だったような顔をする。 影も同じで、花が消えた途端に存在感だけ増えた。 増えたのではなく、こちらが見始めただけなのだろうが、その順番には少し納得した。

いや、納得するのも早い。影は最初からあった。 「私が毎朝見逃していただけ」で、季節とは関係ないのかもしれない。

見ていない時間にも花は咲いて、枯れて、影はそのたびに勝手について回っていた。 私だけ少し遅れて通過している。

来年また咲いたとしても、名前は知らないままだと思う。 調べれば終わる話なのだが、その判断は別の部署が担当している。

だから来年も、葉より先に影を見て、それから花を見るのかもしれない。 最後まで残るのは、植え込みの縁石だった。