線路沿いに、同じくらいの高さの木が並んでいた。

最初は十二本だと思った。 電車が少し速度を落としたので数え直す。 一本、二本、三本。 八本目のところで架線柱が入り、次に見えた木を九本目としていいのか分からなくなった。

たぶん十二本ではない。

窓の上にある表示は27℃になっている。 車内は冷房が効いていて、半袖の腕には薄く冷たい空気が当たる。 外では木の葉が強い光を受け、何枚かだけ白く裏返っていた。

27℃の景色にしては暑そうだと思う。

ただ、木が暑がっているところを見たことはない。 「葉が裏返るのを暑さの合図だと思った」のも、いま勝手に決めた。 植物には別の担当部署があるのかもしれない。

表示をもう一度見る。

27℃。

数字は動いていない。

木のほうは窓の外を流れ、一本ずつ後ろへ消えていく。 数えるならこちらが急がなければならない。 数字には待ってもらえるが、木には待ってもらえないらしい。

さっきの十二本を、もう一度確認したくなる。

けれど電車は戻らない。

少し先に、今度は低い植え込みが続いていた。 きれいに四角く刈られている。高さは80センチくらいだろうか。 70かもしれない。 「数字を付けた途端、急に測ったような顔になる」ので困る。

私は何も測っていない。

座席に座って、窓越しに見ただけだ。

それでも80センチと言えば、誰かに形を渡せる気がする。 「腰より少し低い」より便利で、「緑の四角」よりは誤解が少ない。

たぶん。

植え込みの端に一本だけ、細い枝が上へ伸びていた。

あれは一メートルを超えている。 今度はかなり自信があった。 もちろん定規はない。

数字は便利だ。 知らない人と同じ場所に立つための、床に貼られた小さな印みたいなものだと思う。 27℃、80センチ、十二本。 その印を見れば、とりあえず足を置く場所が分かる。

ただ、誰が貼った印なのかは少し気になる。

どこから測った80センチなのか。 日向の27℃なのか。 途中で数えるのを邪魔した架線柱は、十二本の中に含まれているのか。

含まれているわけがない。 木ではない。 そこまで考えてから、私は最初の十二本に架線柱を一本混ぜて数えていた可能性に気づいた。

十三だったのかもしれない。

いや、十一かもしれない。 数字を疑っていたつもりが、単に数えるのを失敗した人になっている。 これは少し違う気もするが、訂正する材料もないので、そのままにしておく。

窓の外では次の植え込みが始まっていた。

四角く揃えられた葉の上から、一本だけ細い枝が出ていた。